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使命感的な何かが湧き上がってきたら更新するブログ

ドラマ「武道館」が僕たちに教えてくれた事 (上)

少し前の話になりますが、アイドル周辺にまつわるデリケートかつタイムリーな問題に鋭く切り込んだ話題作、テレビドラマ「武道館」が最終話を迎えました。

あの宮崎さん率いる「Juice=Juice」の面々が架空のアイドルグループ「NEXT YOU」に扮し地上波の連続ドラマで大活躍という「中さきちゃんがテレビにうつってるんです!」クラスのサプライズ案件に「あーだこーだ」毎週文句を言いながらもBSスカパー版含め全8話ガッチリ余すところ無く堪能してしまいました。世間的には「もうひとつのJリーグ」以上「俺達のオーレ」未満といった評価に落ち着きつつありますが、主人公「愛子」役を「ラブシーン上等」の体当たりで演じきった宮本佳林など少なからず見所もありました。そして物語のテーマがテーマだけに思うところもありました。その辺りをチョットだけ書いてみようかしらと思った次第です。

「武道館」の終わり方

あらためて最終話をザッと振り返って見ましょう。「恋人」と「アイドル」どちらを取るか、その選択を迫られていた愛子。武道館前で待つ「あおい」以外のNEXTYOUメンバーのもとにスローモーション映像でやってくる愛子。約束通り武道館前に来てくれた愛子を見て安堵の表情を浮かべる「あおい」以外のNEXTYOUメンバーたち。愛子が「あおい」以外のNEXTYOUメンバーに何かを語りかけようとしたその瞬間「12年後」というテロップとともに場面は一転し、見覚えのある例の高級マンションの一室。

すっかりお爺ちゃん化したカリスマブロガー「ハカセ」こと六角精児が見つめる高性能デスクトップPCのディスプレイには「NEXTYOU13期候補生大募集!!」の文字とともに「おへその国」から飛び出してきたような、どこか見覚えのある5人の少女たち。どうやらセンター「おのみず」*1率いる「12年後」のNEXTYOUメンバーのようです。そして世界規模での活躍を暗示させる「ワールドツアー’28」の文字が。これまた随分と景気の良い話ですね。

【13期候補生募集について】と題された例の敏腕カリスマプロデューサー氏のコメントを読みながら、高性能デスクトップPCの前で「そうだよなあ」なんて感慨深けに頷く六角さん。そこにはこんな文章が書かれている。

昔は、恋愛くらいでアイドルは卒業を迫られたんですよ(笑)今はそんなこと全然考えられませんね。

「12年後」恐るべしです。何だか2chの「ジジイが昭和を懐かしむスレ」的なやつで「昔は電車の中で普通にタバコが吸えてたんだよwww今じゃそんなん考えられんわなwwwww」くらいの乗りです。それに対して六角さんも「そんなふうに考えていた時期が俺にもありました」然とした追憶のリアクション。おもむろに12年前の「ネクステフォルダ」から動画を引っ張り出してきてダブルクリックをキメる六角さん。そして流れる「愛子の謝罪動画」…。

物語のオチとしては、この動画が世間で大きな反響を呼ぶらしく「愛子の涙」は多くの人たちの心を動かし、来るべき近未来「アイドルの価値観」に大変革をもたらす端緒となった風を匂わせつつ足早にドラマは終わります。六角さんと宮本さんの熱演もあり、力技的に何か「ホロリ」とさせられてしまった部分もありましたが、結局のところ愛子と碧は「恋人」を選んで「武道館」の舞台には立てなかったけれど、その歌とダンスは我々の心に深く刻まれていると。こういう事らしいです。

原作小説だと「アイドルの価値観」が大きく変わった数年後、女優への転身を果たした「碧」と、大地と結婚して普通の専業主婦になっていた「愛子」の二人がNEXTYOUのオリジナルメンバーとして「同窓会」なるイベントに招待されるという流れから、そこで初めて武道館の舞台に立ったとか立たなかったとかみたいな後日談があるらしいのですが、ドラマだとフォロー的な部分を織り込むわけでもなくバッサリとここで終わっちゃう。BSスカパー版だと矢口真里さんと辻希美さんによるアチラコチラで散々こすり倒してきたような現役当時の裏話的エピソードトークお茶を濁すというバッドなエンディングが待っています。

あえて「アイドルスキャンダル界の重鎮」的位置づけにある先輩を執拗にキャスティングしてくるあたりの演出意図というか「フジテレビ」なりの思惑がイケてるのかズレてるのかは一先ず置いとくとして、この作品を通して作者が伝えたかった事ってのは、つまり「アイドルだって恋愛したっていいじゃない、だって人間だもの」と簡単に言ってしまえばこういう事なんでしょう。まったくもって正論です、ぐうの音も出ません。本来あるべき人間として当たり前の欲求に抗って「ファン」や「事務所」からいびつな要望を突き付けられる不条理な現代のアイドル事情に一石を投じるべく何だかわからない使命感に駆られて描かれた志高き作品と見ましたよ俺は。悲劇のヒロインである本編の主人公「愛子」は謝罪動画という十字架にかけられ「アイドル」の世界を追われてしまう。人間として当たり前の欲望に素直すぎたがゆえに起こった悲しき結末です。そんな愛子を見て可哀想と感じるのも無理はないでしょう。しかしながら、それでもなお、だからこそ、あえてこう言いたい。

「一番かわいそうなのは今も愛子のことを思いながらスヤスヤ寝てる愛子ヲタ」であると。

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つんくボーイの朝井評

「武道館」原作者の朝井リョウ氏はかねてから大の「つんく信者」を標榜しており、それに呼応する形で原作本の帯には「つんく本人」からのこのような「朝井評」が記されています。

アイドルって作るものでなく、楽しむものである方が良いに決まってる。
なのに、著者はこうやってアイドルを生み出す側にチャレンジした。
それも文学の世界で……。なんたる野望。なんたるマニアック。なんたる妄想力

 

つんく♂/音楽家、エンターテインメントプロデューサー)

この言葉をどう捉えるか。人並み外れた「妄想力」でもって本作を書き上げた朝井氏の作家としての力量、その野心的な創作意欲は認めつつも、そもそも「アイドル」を文学の題材にするのは「マニアック」であり「チャレンジャー」と言える行為なんじゃないの?という懐疑的なニュアンスが少なからず含まれているように思うわけです。もちろん「つんく本人」の真意はわかりませんよ。勝手にそう解釈しているだけです。というか俺はそう思うわけです。何故なのか。

そりゃ人間が考えた「物語」なんかが現実を超えることなど絶対にあり得ないのが「アイドル」というジャンルだど確信してるからです。12年とは言わないまでも3年も見てりゃ何となく分かることです。余程トップエールのアプガのインタビュー読んでる方が面白いわけで。始めから「アイドルがテーマの小説なんて無粋の極みじゃん。」くらいに思っていたフシすらある。

朝井氏が語るアイドル観と浅倉樹々のヘアアレンジ

それでもなお、あえてそこに挑んだのが気鋭の若手小説家である朝井氏なわけです。「武道館」に関する朝井氏のインタビュー(web上で読めるやつ)なんかを読んでいくと革新的な「アイドル観」を持つ色々と面白い人物であることも分かってきました。

何が面白いって清々しいまでに彼の意見には同感出来なかった。批判というわけでなく自分と全く違う「アイドル観」にふれて新鮮な驚きがあったのです。まず「アイドル観」はともかく「アイドルファン観」と言うか彼の考える「ヲタク像」みたいなものに酷く現実とのズレを感じてしまいました。というかネットで好き放題書き散らかしている「名無し募集中。。。」みたいな物の中に「アイドルファン」の幻影を見てしまっているように感じたのです。「なんで彼氏がいたら怒るんだろう?」「何でブランドのカバンを使ってるだけで怒るんだろう」ヲタクはアイドルが人間っぽい事をしたら凄く怒ると主張する彼は、自身が影響を受けたというテレビ番組「ASAYAN」を引き合いに出してこう訴えるわけです。

中澤裕子さんがオーディションを受けていたとき、「昼間はOLの仕事、そして退勤後は夜の仕事もしていた」とナレーションが入ったりして。きっとこれ、今だったらアイドルファンから叩かれますよね。「夜の仕事をしていた人がアイドルなんて!」って。

中澤裕子が参加したのはそもそも「アイドル」のオーディションではなかったわけですが。仮にそうだったとして当時であろうが今であろうが叩く人は叩くし、アイドルファンであろうがなかろうが叩く人は叩くわけで、なんとなく「アイドルファン」を「得体のしれないモンスター」みたく特別な存在に祭り上げちゃっているふしがある。というか「アイドルファン」にも温厚な奴もいりゃあ血気盛んな奴もいるだろうに人間をジャンルに分けてかっちり分類しようとし過ぎだし。あとブランドのカバンで怒ってたやつ出てこいよ!

こちらのインタビューでは、そんな朝井氏の「アイドル観」みたいなものが割りとストレートに語られており非常に興味深いものになっています。

朝井:ぼく個人としては、アイドルが恋愛していようがいまいがビックリするくらいどうでもいいんですよね。それはどういうスタンスでアイドルを見ているかにもよると思うんですけど、ぼくが典型的なスキル厨(註:歌やダンスのスキルやクオリティーを重視するファンのこと)だからなのかも(笑い)。おださく(註:モーニング娘。’16小田さくら。歌唱力や表現力に定評がある)が大好きで。多分、おださくが好きな人は、「恋愛禁止」ということにあんまり興味がないような気がしていて。

 それは結局アイドルに何を求めるかっていう話なんだと思います。ぼくの場合は、自分の人生の何か足りないところをアイドルに満たしてもらおうとはあまり考えていないので、アイドルが恋愛しているかどうかはあんまり関係ない。ただ素晴らしいパフォーマンスが見られればそれでいい、という考え方なんですよ。

要約すると 大体こんな感じになります。

ちょ、ちょ、ちょっと待って下さいよー。いや~参ったなあ「アイドル好き」とか言っちゃうと、どうしてもこう「アイドルヲタク」ってか「お前も好きだねー」なんて馬鹿にされちゃうんスよねー。違うんスよ、そうじゃなくて、僕なんかの場合「可愛い」とか「幼い」とか「マシュマロボディ」とか唯一神がどうとか、そういうのホント興味ないんスよ。そういう目線では一切見てませんもん。

やっぱこう何つっても「つんくさん」の曲がまず素晴らしい。特に彼の書く歌詞が良いんですよ。つんくさんは常々「アイドルに曲を作ってるつもりはない」とおっしゃられてる方ですからね。恋愛の曲もバンバン書いてるわけで。もちろん「地球の平和をを本気で願ってる」的な曲もあったりするんだけど。でも基本「恋愛OK」な考え方だと思うんスよ彼は。口に出して言わないまでも本音の部分じゃきっと。

なんかアイドルは「恋愛禁止じゃなきゃダメだー!」「ブランドのカバンとか持っちゃいけないんだぞー!」みたいな気持ちの悪い発想あるじゃないすか「アイドルオタク」の、あれとか全く理解出来ないっスもん。そもそも恋愛を犠牲にすればアイドルはより輝くとかあり得ないっての。自分の満たされない境遇を棚に上げてアイドルにアレするなコレするなって「アレコレしたい!」に決まっとるだろうが普通の人間なんだから「アイドル」なんてしょせん。「自分の人生の何か足りないところをアイドルに満たしてもらおう」なんて、なに図々しいこと考えてんだよアイドルヲタクの分際でとね。

まあ僕なんかは典型的なパフォーマンス重視のスキル厨ですから。アイドルが恋愛しようがアレコレしようが一向に構わない。「アイドルの恋愛」とかビックリするくらいどうでもいい事にビックリしましたもん先週。だから、あんま関係無いッスよ僕にとって。ただパフォーマンスが素晴らしけりゃそれで良いんですから。スタンスが全く違いますからその辺のヲタクたちとは。

えっ!?「ハロステ!」ですか。もちろん見ますよ「ハロプロファン」ですから。やっぱパフォーマンス重視のスキル厨としてはモーニング娘。’16の新曲が気になりました。新曲の「The Vision」の振付はバレエの要素が入ってますから、どうしてもバレエ経験者を自然と目で追っちゃいますよね。なんつーか、この辺スキル厨の悲しい性というか。あとジュースさんの「愛のダイビング」のパフォーマンスが素晴らしい。歌唱スキルも高くてユニゾンの綺麗さもハロプロ随一のクオリティーだし。それに何と言っても「ゆかにゃ」が可愛いらしい。いや宮崎さんのアザ可愛いらしさを演出するスキルがね。コレ最高なんすよ。

ヘアアレンジのコーナーですか?まあザッと流す程度には一応チェックしますよ。でも見たり見なかったりかな~。今回つばきの子ですか、これは見ましたよね。

何か「不器用な子にも朝時間のない子にも出来るヘアアレンジ」らしいんですけど。これ浅倉さんが前回出た時に「サッと出来るお団子ヘア」とか言って全然サッと出来てなかったんですよ。おまけに仕上がりも後れ毛がモサモサになっちゃってて。何か不器用そうな子だなー、可愛らしいなーと、あのスキル的な文脈でね。でっ、それを踏まえて今回が「不器用な子にも出来るヘアアレンジ」だったもんだから、ハッ!そう来たかと。思っちゃいますよねー。というか実際「そう来たか!」って声に出してハッキリ言いましたもん。

そんで「ききちゃん」がこう一生懸命説明しながら色々やるんだけど、まだ素人っぽさというか小慣れてない感じがあって、カメラを見つめる視線に恥じらいが残ってたりするんスよ。そこに感動しちゃうんだよなー。あと櫛のことを「コーム」とか呼んじゃって。何ですか「コーム」って。今時の若い子は櫛のことを「コーム」って言うんですかね。ああいうの勉強になるわー。

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あっもういいですか。長いですか。「結構がっちり見てるじゃん」って……。やだな~僕はあくまで「アイドルヲタク」なんざこんな感じでニヤニヤしながら見てるんだろうとね。こう鳥瞰的視点でもってどうしても見てしまうわけですよスタンス的に。どうせお前らこんなんだろうと。まず「アイドル」が可愛いとかデレデレニヤニヤした方向性でやってませんもん。僕は典型的スキル厨だぞ!おりゃ!

だいたい可愛いから応援するとか、そんなのはパフォーマンス重視のスキル厨からすれば悪魔の思想ですよ。可愛いとか可愛くないとかで「アイドル」を推し量るなんて「アイドルヲタク」の行動心理にほかなりません。

その点、僕レベルになるとそういうの完全に度外視して「小田さくら推し」でやらせてもらってますから。おださく好きって「恋愛禁止」とかに興味ないでしょ。あいつら全員「典型的パフォーマンス重視のスキル厨」っしょどうせ。

じゃ今から向かいますんで。あの「インゲン」と「豚肉」は買っとくんで、先輩は「辛子醤油」だけ用意しといてくださいね。はい、よろしくお願いしまーす。はーい、それじゃ、はーい、ちーす。ちーーーす。

 まず、朝井氏に謝っておきます。要約したつもりがシドニーシェルダンばりの超訳になってしまいました。

※ひさしぶりに書いたら勘がもどらずに「ジャーマンプログレ」ばりの長尺になってしまいました。後で読み返す時に面倒なので大変遺憾ながら一旦ここで切ります。こんな所で切るなよって話ですが。

すぐに書きますんで、そこに座って待ってて下さい。

つんく♂の事だからこんなに言うんだよ!!

今年のハロプロと今年のつんく

最近、びっくりするくらいブログを更新していなかったさおりです ♪  *1

今年のハロプロ関係を振り返ってみると、やれ痩せたり太ったり、やれ急に辞めたり思わぬ所から復活したり、はたまたBerryz工房が活動休止したと思ったら新たなファクトリーがワラワラと誕生してみたり、℃-uteミュージックフェアで共演したツイストの世良さんに「ペットの飼い方に関して」やんわりと注意されたりといった不祥事なんかも含めて、まあ色々と動きがありました。

そして、その中でも「ハロプロ」全体を通して特に大きかったのは

つんく♂ハロプロ総合プロデュース体制の終焉。

 この1点に尽きると思うわけですね。

長きにわたって陰に日向にハロプロを支え続けてきたあの男。つんく氏が自身の著書「だから、生きる。」の中で、現在はハロプロ総合プロデューサー」のポストを離れ、あくまで一作家としてモーニング娘。などのサウンドプロデュースに携わっているという事を明らかにしました。昨年からの流れを見てきたハロヲタにとってはすでに薄々どころか承知の事実だったわけですが、いざこうしてハッキリ明言されちゃうと、やはりこれ腹にズシリとくるものがあります。

また「ハロプロ総合プロデューサー卒業」の構想自体はつんく氏の病気発覚以前から打診されていた話のようで、これによってメンバーのみならず今の制作陣が全て入れ替わったとしても未来永劫続けられるハロプロ永久機関化計画」的なアップフロントサイドの思惑がうっすらと垣間見える結果となりました。

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ハロプロを離れたとはいえ、つんく氏個人としては「声帯摘出手術」の件を告白して以降、その悲劇性ゆえに世間的にもマスコミ的にも大きな関心を呼ぶ事となり、図らずもつんく再評価」的な流れを生み出していくあたりが何とも皮肉な話で、これもまた有名人ゆえの宿命なのでしょう。

実際つんくワークスのほとんどを占めていた「ハロプロ縛り」から開放されたことにより、これまでになく幅広い外部アーティストへの楽曲提供が目立つようになりました。

ジャニーズの人気グループKis-My-Ft2(キスマイフットツー)に提供した作品「最後もやっぱり君」はオリコンウイークリーチャートで見事1位を獲得。石川さゆり野口五郎といった大御所ベテラン歌手との仕事だけに留まらず、若手の「Chu-Z」や「イケてるハーツ」といった得体のしれない地下アイドル新進気鋭のアイドルグループにまで楽曲を提供するフットワークの軽さというか、昔なじみの音楽仲間への義理堅さは流石のもんです。

そして特筆すべきは、美勇伝恋のヌケガラ」の作詞でお馴染みの湯川れい子先生直々に依頼され、次世代に歌い継がれる「新しい子守唄」として作られた楽曲「うまれてきてくれて ありがとう」が今年の日本レコード大賞で作曲賞に選ばれるという栄誉に輝きました。額面通りこの作品が今年発売されたものの中で最も秀でた楽曲だったのかと問われれば、そりゃあ中島卓偉あたりが黙ってないでしょうが、話題性やら功労賞的な意味合いやら大人の事情が諸々からんで最終的に音楽界の重鎮が「今年はつんくにやろうじゃないの」という事で丸く収まったと勝手に想像しておきます。

しかしこの日本レコード大賞「作曲賞」がどれほど凄い賞なのかいまいちピンとこなかったもので、大変失礼ではありますが過去の受賞者をざっと洗わせてもらいました。

2014年 鬼龍院翔

2013年 大友良英Sachiko M

2012年 レーモンド松屋

2011年 若草恵

2010年 FUNKY MONKEY BABYS

2009年 JUJU、JAY’EDJeff Miyahara、RYLL & couco

2008年 叶弦大

2007年 新井満

2006年 五木ひろし

2005年 弦哲也

2004年 河口京吾

2003年 松本良喜

2002年 聖川湧

2001年 菊池一仁

2000年 原一博

どうですこれ。ファンキーモンキーから五木先生にいたるまで各種取り揃えたカオスなラインナップ。日本歌謡界の深淵を覗き見た思いです。それはさておき重要なのはここからです。2000年に原一博氏が小柳ゆき「愛情」の大ヒットで作曲賞をゲットした前年、1999年の受賞者を見て驚いたわけだ。

1999年 つんくLOVEマシーン」(歌・モーニング娘。

前にも貰った事があるというね。というか何回でも貰えるパターンのやつなのか「作曲賞」って。これ何度も受賞した人って過去にもいたのでしょうか。色々と気になるところではありますが、もうこれ以上調べる気力も湧かないので各自ウィキペディアとかで調べてください。

当の本人も「LOVEマシーン」で受賞していた事などお首にも出さず、さも初めてもらったかのような新鮮なリアクション、実にスマートなもんです。レーモンド松屋って誰やねんとか野暮な詮索は無しですよ。ここは素直に「おめでとう!やったじゃん!!」とリプライジングするのがSNS時代のマナーというものです。

 LOVEマシーンの呪縛

LOVEマシーン」について、後につんく♂「音楽の神が降りて来て作った」と語ったそうです。先ほどウィキペディアで調べました。

頻繁に中学生くらいの女の子が降りて来てるのは「一部の作品」を通じて常々感じていた事ですが、さすがに天下のLOVEマシーンともなると「音楽の神」という事になる。

だからといって今のモーニング娘。が「ゴールデンの音楽特番」に珍しく呼ばれたと思ったら新曲そっちのけでLOVEマシーンでEVERY BODY BODY BODYしちゃった日にゃあ、そりゃもうただの「ラブマ保存会」じゃありませんか。そもそも今のモーニング娘。LOVEマシーンより後に生まれた」メンバー何人いると思ってんだよと。工藤と牧野と羽賀で3人もいるんだよと。*2

しかし怒りのあまり忘れがちですが、そのLOVEマシーンの神がかり的な大ヒットが無ければ、それに続くプッチモニちょこっとLOVEでの連続ミリオンもなかったでしょうし、モーニング娘。が社会現象と呼べるほどの国民的大ブレイクを果たす事もなかったでしょう。そうなれば「モーニング娘。の妹分オーディション」に松浦亜弥が応募してくる事もないし、当然ハロープロジェクトのような組織に発展することもなかった。「ハロプロキッズ」も「ハロプロエッグ」も生まれなかったでしょう。モーニング娘。が現在まで続いている事など到底ありえなかった。つまり工藤と牧野と羽賀モーニング娘。になる事もなかったわけですよ。結局のところ、あの日あの時つんく♂に音楽の神が舞い降りてなければ全てが存在しなかったというパラドックスに陥るわけです。

このような昔の大ヒット曲ばかりがことさらに評価され、今の楽曲がほとんど知られることなく埋もれてしまっている現状へのモヤモヤは何も世俗を離れた「ハロプロ」に思い入れの深い連中だけのものではなく、つんく本人にとっても自身に対する過去への賞賛とは裏腹に心の奥底では「今も良い曲作ってるで」という強い思いはあったはずです。

その一端が垣間見れたのが、約2年前にOAされたヒャダインこと前山田健一氏のラジオ番組「ヒャダインの"ガルポプ!"」にゲストとして「つんく♂」が登場した回。 


ヒャダインが「アイドルプロデュース界のレジェンド」とリスペクトして憚らない「つんく♂」をゲストに招き、ハロープロジェクトの楽曲を掘り下げつつつんくの兄貴」にアレコレご教授賜るといった「つんく接待」色の濃い内容の面白回です。

この中でつんく♂がお薦めするハロプロ楽曲を紹介していくというコーナーがありまして、あらかじめ「つんく♂」がセレクトした曲の中から「ヒャダイン」に1曲だけ選んでもらうといった趣向になっています。

ニュアンス的には音源を聴いてもらうのが一番わかりやすいのですが、まずつんく♂Berryz工房の中から 「蝉」「さぼり」「あなたなしでは生きてゆけないの3曲をセレクトします。いずれも初期Berryz工房を代表する名曲。つんく♂が軽く解説を交えながら1曲ずつ紹介していくのですが、どうも「蝉」「さぼり」での食いつきが悪いんですね健一が「ホウ」なんて気のない相槌を打つばかり。一転して「あななし」ではガッツリ食いついてアレコレ絶賛したあげく結局「あななし」を選んじゃう。

これ明らかに「あななし」しか知らなかった人のリアクションですよ。つんく♂からすれば自分の事をリスペクトしてくれてるみたいだし、可愛い弟分的存在くらいに思っていたとして不思議じゃない、もはや「すっぽんファミリー」も同然です。ましてや同業者ならば当然この辺はマストで押さえているだろうというヒャダインへの淡い期待もあったはず。何だったら割と語られることの多い「あななし」なんてダミーみたいなもんで本命は「蝉」「さぼり」だったフシすらある。そもそも前山田クラスの人物にすら「第(2)成長記」はおろかアイドルポップスの歴史的名盤「1st 超ベリーズが聞かれていなかったという事実の重み。ショック大ですよこれは。

曲が終わってクールを装いつつも動揺を隠しきれない「つんく」がこう切り出します。

寺)いや「蝉」「さぼり」をねえ、歌詞をちょっとヒャダインに今度見てもらいたい。

前)あー、ぜひぜひ拝見させてもらいます。

寺)俺の女子力をもし語るならこの曲を知らないとちょっとダメねーみたいなね。

前)そうなんですね。やっぱつんくさんの女子力は勉強をさせて頂く事すごい多いんで……。

俺の女子力はさておき、さすがに不穏な空気を感じとったのか 、ここからヒャダインつんくさんの女子力」の凄さをとにかくアピールして何とかその場を取り繕います。しかし次のスマイレージ曲でもぁまのじゃくをスルーしてチョトマテクダサイ!を選んでしまうという目も当てられないイージーミス。おい!健一「ちょっと待ってください!」はこっちのセリフだよと。

確かに健一の言う通り「万人に受ける曲」という点でのインパクトは十分にある。取り分け子供への訴求力の高さを裏付けるエピソードとして当時小学4年生だった船木結がこの曲のMVを観て「印象に残るタイトルと、ダンスにはまってハロー!プロジェクトを好きになりました。(「OVERTURE」 005 2015 December)」と「ハロプロ」のオーディションを受けるきっかけとなったという、その1点においても評価されてしかるべきものです。なのですが、この流れ的には「チョトマテクダサイ!」じゃないでしょう。つんくが語りたくて仕方なかったのは「俺の女子力」についてなんだよ。何故汲み取ってやらんかねそこを!もうぁまのじゃく何てその際たるもんじゃないか!!

そして再びつんく♂を悲しませてしまうのです。

 ハロプロ楽曲大賞と「青春小僧」

今年のハロプロ楽曲大賞ですが、投票するにあたりノミネートリストを見るにつけ、やはり全体を占める「つんく楽曲」の割合、くだけた言い方をすれば「寺田曲」の激減ぶりをあらためて噛みしめる事となりました。モーニング娘。のシングル絡みとハロプロ研修生のアルバム曲くらいですか、まあ研修生アルバムも実質去年の作品ですけど。

そんな「寺田曲」を渇望する気持ちとは裏腹に、いざ投票してみた結果がこれですよ。

1. 愛・愛・傘 / Juice=Juice (作詞作曲:中島卓偉
2. 恋泥棒 / カントリー・ガールズ (作詞:児玉雨子 作曲:村カワ基成
3. 念には念 / こぶしファクトリー (作詞作曲:アベショー)
4. 生まれたてのBaby Love / Juice=Juice (作詞:星部ショウ 作曲:masaaki asada)
5. 今すぐ飛び込む勇気 / モーニング娘。'15 (作詞:児玉雨子/三浦徳子 作曲:泰誠)

選評とかはアレコレ書きませんが、良い曲なので何回も聴いたよっていう単純な理由です。そして、ご覧のとおり「つんく曲」は5位以内に入りませんでした。

今年の「つんく曲」がダメだったのかと言えば、そこまで悪くもなかった。むしろ「非つんくハロプロ楽曲」が押しなべて良かったという「嬉しい誤算」故の結果です。ただ少し感じたことは、昨年春に療養するまでの「つんく氏」は、モーニング娘。Berryz工房℃-uteスマイレージ、Juice=Juiceというハロプロ全グループの「シングル曲」やら「アルバム曲」を作り、その他もろもろマルチな仕事をこなしつつお好み焼き屋の新メニュー」*3まで考えるという尋常ではない仕事量をこなしており、それ故これまでにハロプロ関連楽曲だけでも優に1000曲*4は超えるという膨大な作品を残してきたわけです。イメージとしては、もはや加藤鷹です。 

そのすべてが良曲と言うつもりもないし、時に首をひねる事もしばしばだったとはいえ、長きに渡ってハイペースで楽曲を量産していった、その多作ぶりから幾多の傑作が生み出されてきた事も我々は知っています。この創作ペースがぐッと落ち着いたことによる影響がまるでないとは言いがたいのではないかと。そこら辺どうも本調子ではないと感じる所以なのです。

例えば青春小僧が泣いているなんてリリース直後は相当はまった口で、渋江修平監督による幻想的なMVとも相まって、その難解な歌詞世界の混沌とポップスの体を綱渡りで成すような奇妙な構造に酔いしれ「YO誰ぞ!」とばかり鼻息も荒く耳を真っ赤にして聴きこんだものです。記念すべきデビュー曲で「世の無常」を歌わされる中学2年生のあかねちんとか、余りにもポピュラーミュージックとして規格外過ぎたのかもしれません。時を経て冷静になって考えてみると「味は美味しいけど、やたらと小骨の多い魚。」という評価に落ち着きました。

www.youtube.com

「大人の事情」とNEXT YOU

最近のつんく作品について忌憚のない意見を述べると、いい意味での俗っぽさに欠けてるような気がして仕方ないわけです。もっとこうギラギラした色気というか、色っぽさ、じれったさ、この地球の平和を本気で願ってるような汗臭さがいまいち足りない。どこか達観してしまったような醒めたところが気になるのです。

もちろんつんく氏の経験した環境の激変ぶりを鑑みれば仕方のない事だし、作風に何がしかの影響があって然るべきことも理解できます。楽曲制作を行う上で言葉の問題がどれほどネックになっているのか、細かいニュアンスとかまでちゃんと伝えられるもんなのか、頭に描いたイメージ通りの作品に仕上がってるのかも分かりせん。なのですが、ぶっちゃけると物足りなさを感じていたわけです。天下一品に行って「あっさり」食ってるような。

そんな折、ジュースの宮崎さんにこんなビッグオファーが舞い込んで来ました。

流行作家の「アイドルもの」という事で、遅かれ早かれ実写化織り込み済みの案件と目されていたように思うのですが、まさかのハロプロしかも「Juice=Juice」というフジテレビお前マジか!な展開に驚きこそすれ、驚いたわけです。

そしてドラマに登場する架空のアイドルグループ「NEXT YOU」つんく♂がプロデュースするという事が明らかになり「背伸び」を最後に途絶えていた「つんく♂プロデュース」の復活を何よりもメンバーが歓喜したというリーダー宮崎さんのコメントはとても印象的でした。

このドラマの主人公のアイドルグループ“NEXT YOU”を私たち5人が演じ、そのプロデュースをつんく♂さんがして下さるということで、久しぶりにつんく♂さんプロデュースで活動できると知った時はメンバーみんなで大喜びしました。(ゆかにゃ談)

220公演を目指して絶賛開催中の単独ライブツアー「LIVE MISSION 220」でもオープニングアクトと称して早速この「NEXT YOU」は登場します。そこで待望のつんく楽曲Next is you!を披露したわけですが、名盤との誉れ高いJuice=Juiceの1stアルバム「First Squeeze!」の非つんく系新曲群を通過した耳には「懐かしい味わい」ながら、さほどインパクトのあるものとは思えませんでした。実際11月の京都FANJ昼公演で見た「NEXT YOU」は楽曲より何より「みんなで行こーぶどーかーん」等のこっ恥ずかしい系のコールアンドレスポンスによる妙な高揚感の記憶しか残っていません。

長くなりましたが本編はここからです。今月1日に川崎CLUB CITTA'で行なわれた「宮本佳林バースデーイベント」ではイベント終了後、同会場とオーディエンスをエキストラに仕立てあげドラマ「武道館」のLIVEシーンの撮影が敢行されました。ここでNext is you!に続くNEXT YOUの新曲が初披露されたのです。タイトルは「大人の事情」

つんく氏がライナーノーツで書いているように当初「主題歌」のつもりで書いたもののドラマスタッフの意向により「挿入歌」という扱いになったのが「大人の事情」となります。この曲は「武道館」という物語のテーマを見事に楽曲として描き切っていました。

ドラマの原作小説「武道館」を実際に読んだわけではないのですが、ネットを駆使して大筋の内容は把握しているつもりです。物語の外観はアイドルの内幕をを描いた「アイドル残酷物語」といった装飾が施されており、これはハロプロ研修生の楽曲「アイドルはロボット」って昭和の話ねつんく氏も書いたように「アイドルがロボット」でいられた幸せな時代とは違い、ネットやSNSの発達した現代社会を「生身の人間」として生きるアイドルの悲哀が描かれているわけです。

しかし、それはあくまでも物語を盛り上げる舞台装置に過ぎず、つまるところ重要なのは「恋愛」の部分、それも「許されざる恋」という部分こそが物語のキモとなるのです。古くは「ロミオとジュリエット」の昔から、島津ゆたかの「ホテル」や韓流ドラマに至るまで、洋の東西を問わず時代を超えて描かれてきた永遠のテーマ。障壁が高ければ高いほど激しく惹かれ合い熱く燃え上がるのが愛ってもんじゃないですか。まさにそこの部分を青春歌謡ポップスとして見事に昇華させたのがこの「大人の事情」という楽曲です。

情感豊かな歌の表現力に定評のあるメンバーを揃えた「Juice=Juice」と、最近スッカリ影を潜めていた「つんく♂」の青春センチメンタル歌謡のマッチングによる相乗効果もあるのでしょう、もはやワロタレベルではない事になっています。

Aメロのつなぎで挟んでくる「吐息ブレイク」の悩ましさ、1番サビの「大人の真似して恋しただけだよ」とかもう痺れるようなパンチライン。宮崎さんも朋子ちゃんも完全に大人なんだけど、そんな野暮なことは言いっこ無しですよ。もうホントマジつんく♂最高じゃん!!世界はこれを待ってたんだよ!!!枯れてるとか疑ったりして悪かったよ、許してよ愛ゆえにごめんなさいね。

拾った音源でここまで熱く語れるほどに「大人の事情」が素晴らしい出来だったわけです。ここにきてメランコリック歌謡の金字塔を打ち立ててくるとは思いもよりませんでした。今時こんな曲書けるのは「つんく」くらいと思わせる「こってり」とした味わい「俺の女子力」が大爆発しています。今年足りなかったつんく成分を保管すべく狂ったように聞きまくってますもん。ありがとう上げてくれた人。

書きたいことはまだまだ山ほどあるのですが、年を跨いでしまいそうなのでさすがに止めておきます。3行くらいで簡潔にまとめる予定でしたが長々と書いてしまいました。でも書かずにはいられなかったのです。

何でこんなに書きたいか分かりますか?!

 

てらにゃの事だからこんなに書くんだよ!

  

 

*1:小野田紗栞の生タマゴリハーサル日記」テイストな書き出しで奇をてらって見たものの、これといってユニークな方向に発展させる術もなく、只々途方に暮れる筆者のやるせなさを表した夢の痕跡。

*2:お気づきの通りこれ野中もでした。完全に素で忘れておりました。本来なら訂正すべきところですが工藤と牧野と羽賀の語感の良さを優先してそのままにしておきます。ちなみにグーグーガンモのTV放送時に野中はまだ生まれていません。

*3:残念ながらもうありません。かりふわ堂『閉店のお知らせ』 : ハロプロキャンバス

*4:徹底検証:ハロプロ楽曲って全部で何曲あるの? | エンタメNEXT - アイドル情報総合ニュースサイト

六月のSad Song

実力診断テストの事とか、加賀楓の事とか色々。書きたい気持ちがままならずYoutubeをいじくり回しては闇雲に「昭和のムード歌謡」動画を見たりして時間を浪費してしまう毎日。随分と久しぶりの更新となってしまいました。結局のところ、森本英世という稀代の名ボーカリストを擁する「敏いとうとハッピー&ブルー」最強という事で間違いなさそうです。

とか、そんな話は別にどうでもよくて。ハッピー&ブルーじゃなく、ハッピーソングに関するブルーな報告について少しばかり書かねばなりません。

不穏な空気を敏感に察知してにわかに湧き上がった一連の「うたちゃん騒動」でしたが、およそ考えうる最悪のかたちでの幕引きとなってしまいました。年明けの「ハロコン」で空前の「うたちゃんフィーバー」を巻き起こし、彗星のごとく「ハロプロ新世代」のトップランカーに躍り出た島村嬉唄ちゃんの脱退。めったなことでは本性を見せない、あの「ももち先輩」こと嗣永桃子さんが「まだ現実が受け止められず寂しく悔しい気持ちでいっぱいです。」と自身のBLOGで複雑な胸の内を明かしたように、メジャーデビューを果たし、まさにこれからといったタイミングでカントリー・ガールズはグループのセンターを失ってしまいました。

残念ではありますが、この件をウダウダほじくり返した所でどうなるわけでもありません。何があったのかは知りませんが、確実に何かがあったのです。「うたちゃん」がステージ上で「うたちゃん」やれてたのも、ハロヲタ一同「うたちゃん」「うたちゃん」していられたのも「うたちゃん」周りの大人たちの協力なくしては最初からなかったという話です。

アップアップガールズ(仮)仙石みなみさんがまだ「ハロプロエッグ」だった時代の話です。東京で行われるレッスンのたびに仙台から新幹線で通っていたという「遠征組」だった仙石さんは、ハロコン前の平日レッスンなどに思うように参加出来ず、ハロコンに出られる「地元組」との経験値による実力差が埋められなくなってきた事への焦りから、高校進学を機に上京したいと泣きながら両親に懇願します。仙石パパ苦渋の決断により「アイドルになりたい」という娘の夢を叶えるため家族そろって上京したという壮絶なエピソードが「TopYell」の最新刊に載っていました。

これ何が驚いたって父親が長年勤めていた会社まで辞めて、東京でハローワーク通いのあげくアルバイトからやり直したって事です。仙石ちゃんの親父ほど振り切った行動はさすがにレアケースでしょうが、いずれにせよ家族のサポートなくして「アイドル稼業」は儘ならないという話です。未成年であれば尚の事でしょう。

例えあなたが「ハロプロ」に憧れ、ルックスや才能にも恵まれた「逸材」であったとしても、親が芸能活動に理解がなかったり、家庭の事情で十分なサポートを受けられないといった理由から「オーディション」に参加することすら叶わないのであれば、どう転んだって「ハロプロメンバー」にはなれないし、中野サンプラザのステージに立つことも、自分の写真がプリントされたマグカップやらマイクロファイバータオルが販売されることも、ポケモーの変なアンケートに回答させられる事すらありません。

今の「ハロプロメンバー」にしたって何かのタイミングが少しでも狂っていたなら全く違う道を歩んでいたかも知れないのです。もしも「尾形はーちん」がフィギュアスケートの才能にもっと恵まれていたら…。もしも小関舞が「前の事務所」でトラブルに巻き込まれていなかったなら…。もしも大塚範一軽部真一がHな同級生だったら…。言い出したらキリのない話です。

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もしも、うたちゃんママが勝手にモーニング娘。12期オーディション」に応募していなければ、そもそも我々は島村嬉唄という存在を知ることすら無かったわけです。これをもって「うたちゃんママ!短い間だったけど良い夢見させてくれてありがとう!!」とスッパリ前を向けるのか、「ウワーンその気にさせといて!!いきなり梯子外すなんて酷いや!酷いや!」と後ろを振り返ってしまうのかはアナタ次第です!!といった所でしょうか。

今となっては俄に信じがたいことですが、元をたどればカントリー・ガールズというユニット自体、昨年の「モーニング娘。12期オーディション」と並行して「カントリー娘。新メンバーオーディション」なんて募集したものの、たいして話題にもならず「該当者なし」で一旦白紙に戻されたような、はっきり言って「会長のきまぐれ案件」あつかいで誰からも期待されていなかった泡沫企画の焼き直し程度に思われていたフシがありました。ハロプロ研修生だった山木梨沙稲場愛香の両名に関しては上手い具合に落とし所が見つかって良かったなくらいの思いはあったにせよ。

昨年11月のSATOYAMAイベントで、初めて観衆を前に「カントリー・ガールズ」としてお披露目された時には、小関舞がばっさり髪を切らされボーイッシュキャラになっていたり、稲場愛香がデコ出し強要させられてたりと「嫌な予感」だらけの余計な味付けてんこ盛り状態で、おまけに「キッズダンスコンテスト」に話題を全部持ってかれるという散々な船出。いわばノーマークの存在だった彼女たちが「カウントダウンコン」でのオリジナル楽曲「愛おしくってごめんね」「恋泥棒」の披露をきっかけに大ブレイクを果たし、今年3月に再びSATOYAMAイベントが行われる頃には完全に話題の中心として、押しも押されぬ人気グループに変貌を遂げていたわけです。

ユーストリームによる生配信やニコニコ生放送のおかげもあり、充実した在宅SATOYAMAライフを過ごさせてもらった身としては、葛城ユキモンゲー岡山やら忍ツクにハロプロ研修生地方組が大集結といったハイライトと呼べる場面はいくつもありましたが、その中でも、ひときわ強烈なインパクトを残したのが「山梨県PR」のステージにカントリー・ガールズが現れた場面でした。おそらく会場に散在するヲタにとって予想外のタイミングでのカントリー・ガールズ登場となったのでしょう。ステージ前にはあまり人が集まっていなかったのだと思われます。そこでメンバーを引率するようにステージに現れた嗣永PMが、まるでベテラン教師が今から授業でも始めるかのように「はいはーい授業始めますよー。席に着いてくださーい。」みたいな調子でこう言い放ったのです。

「はーい。カントリー・ガールズだよ~、みんな集合してね~。はいっ、ステージにカントリー・ガールズいますよ~。みなさん走って走って、カントリー・ガールズいますよ~。勢いのあるカントリー・ガールズですよ~。みなさーんお集まりください、大丈夫かな~。はいっ、集まりましたお願いします。」

人を小馬鹿にしたような、ホント憎ったらしい口調なんですよこれが。もし自分が「勢いのないアイドルグループ」のメンバーだったら奥歯ギリギリ噛みしめるレベルの憎ったらしさです。もうなんかFUJIWARA原西さんのギャグ「俺やで!」の境地といいますか、ヲタ扱いの雑っぷりも含めてスゲー面白かったわけです。

最後の「お願いします。」でMCの篠田潤子さんに振るのですが、この言い方がお気にめさなかったのか「しのじゅんさん」少々カチンときちゃったようで「はい、承知致しました~」と一旦は冷静をよそおい進行しかけるも「あれ、カントリー・ガールズってこんなキャラだった~?何か透明感ある初々しい新人って聞いてるんですけど?」と、やんわりした口調ながらトゲのある質問をぶつけてきます。大人の嫌味ってやつですね、これ森戸ちゃんだったら震え上がって耳が赤くなるレベルの恐ろしさです。しかし嗣永PMそんなもんで臆するようなタマじゃない、事務所の先輩だろうが一歩も引きません。「あーもうその通りじゃないですか、透明感あって初々しくって」とサラリとすっとぼけて見せる、なに余計なこと聞いてんだよこのクソ婆あと言わんばかりの小馬鹿にした物言い。何でしょう大奥でしょうかこれは。で、桃子と潤子のガンのくれ合い飛ばし合いとかは別にどうでもよくて、冒頭にあった「勢いのあるカントリー・ガールズ」発言に象徴されるような場面が、スカパーで全国に生中継された「ひなフェス」でも展開されるのです。

言うまでもなく、今年上半期のハロプロを代表する楽曲「愛おしくってごめんね」を披露するのですが、冒頭のMCで稲場さんからの「ももち先輩、可愛く曲紹介お願いします。」というフリを受けて、PMお得意のファニーボイスで「愛おしくってごめんね」と可愛く曲紹介するも、無常にもブザー音にかき消されるという上記PVどうりのお約束。すぐさま山木さんが「ももち先輩の可愛さは合格点以下」と毒を吐きつつ「ここはやっぱり嬉唄ちゃんが」と代わりに「うたちゃん」が曲紹介するヲタまっしぐらの展開。あっさりとイントロが始まり、颯爽と踊りだす嬉唄ちゃんを尻目に唖然として立ちすくむ嗣永PMの顔芸でひと笑いあったところで、そのままスッと曲に入っていくという、このベテランコミックバンドのような小粋な曲の入り方をサラリとやってのけます。誰が本書いたのか知りませんが、これが実にカッコ良かった。普通にやるだけでも間違いなく受ける「鉄板ネタ」みたいな曲を、さらに後乗せサクサクで美味しくしてしまおうという貪欲さたるや。まさに時の勢いを感じさせる一場面でした。

Berryz工房の活動停止。道重さゆみの卒業。つんくプロデュースからの脱却を余儀なくされ「ハロプロ」が大きく変わろうとするタイミング。愛おしくってごめんねのセリフパートのハマリ具合。振り付け含めポップスとしての完成度の高さ。メンバー全員小柄なところ。山木さんのアディクション。数え上げたらキリがなく、まさに全部マジック、きっとマジックだったのかも知れません。

 『WEBデビュー』でのインタビューの中で、嗣永桃子は「カントリー」メンバーそれぞれの魅力を聞かれ、島村嬉唄についてこのように述べています。

嬉唄ちゃんは、必要以上に恥ずかしがり屋。でもステージを見ていてオーラがあるんですよ。まだ芸能界に入って4ヵ月なのに、初めからオーラがあるということは、そもそも芸能人の素質があるのかなと。あと、ちょっと弱々しい感じかなと思ってたんですけど、今インタビューの受け応えを聞いてたら、思ったよりしっかりしているし、文章力もあるし、そういうギャップもたまんないんじゃないかな。

 さすが、世が世なら教鞭をとっていた人物だけに、実に的確な人物評となっています。嗣永PM自身アイドルとして長年に渡って活動してきて、先輩後輩合わせて何人ものアイドルを見てきた中で「最初からオーラがある」という言葉で語られたような、いわば「生まれ持って華のある」タイプが、いかに貴重な存在であることも重々承知のことでしょう。だからこそ彼女は事あるごとに「うたちゃん」に無茶振りをして「うたちゃん」をイジって「うたちゃん」を恥ずかしがらせてきたのです。言うなれば人一倍「うたちゃん!うたちゃん!」してきたのが嗣永PMであり、まさに「うたちゃんフィーバー」を仕掛けた張本人に他なりません。

「アイドル」と「先生」という2足のわらじ。嗣永桃子が叶えたかった事を一挙に実現する、まさに夢のようなグループが「カントリー・ガールズ」といえます。新人アイドルである「生徒」たちを、アイドルの先輩であり「先生」である「ももち先輩」が教育していくという図式、いまだ嘗て無かったアイドルグループの新機軸です。そしてメンバーの中で唯一人「芸能活動未経験者」だった「うたちゃん」は、嗣永先生にとって初めての教え子と呼べる存在だったのではないでしょうか。

今回の件って「事務所」も「ヲタ」も「メンバー」も「島村家」も一様に傷ついて、結局誰も得してないという。その中で「うたちゃん」本人の意志だけが置き去りにされてしまったように感じて、どうにも喉の奥に小骨が刺さったままのヒリヒリが残るのです。

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ハロプロを10年以上見続けているようなヲタなら、こういった悲哀に満ちた「生臭い」経験を幾度となく乗り越えてきたことでしょう。去る者がいれば、新たに入ってくる者もいる。ハロプロってのはそういうもんだと達観している部分もあるわけです。それが本人の意志だったり、本人の行動によって引き起こされたものなら、残念だけど仕方ないわけで。ただ、そうじゃない場合は、そうじゃない。

ちょっと終わりそうもないんで、強引にまとめに入ります。

今回の件の第一報が入った日、まさに℃-uteが7年ぶりにミュージックステーション出演を果たした日でもありました。それまでの祝賀ムードから一変してお通夜状態に陥ったことが思い出されます。よく知られるように℃-uteというグループは長い歴史を持っており、結成が2005年ですから今からちょうど10年前ということになる。インディーズ活動を経て2007年2月に桜チラリでメジャーデビューするのですが、厳密には2006年にDVDとアルバムでメジャーデビューしています。デビューアルバムキューティークイーン VOL.1発売直後にグループを脱退したのが、当時中学2年生だった村上愛でした。

グループの根幹を揺るがしかねないキーパーソンの脱退ということで、どうしても今回の件と重なってしまいます。公式HPによる事後発表。今回とは違い、本人からのコメントこそ記載されましたが、最後のステージは用意されませんでした。脱退直後に行われた「アルバム発売記念イベント」ではリーダー矢島舞美による説明と残りのメンバーでこれからは頑張っていく事が表明され、それを最後に長い間村上愛の名前がメンバーから聞かれる事はありませんでした。おそらく今回の件もカントリー・ガールズ各メンバーのBLOGでの報告を最後に「うたちゃん」の名前がメンバーから聞かれることはないでしょう。ただし、℃-uteに関してはハロープロジェクトキッズ10周年あたりから状況が徐々に変わり始め、折に触れて元メンバーや当時のエピソードなんかも普通に話せるようになりました。先日の横浜アリーナで行われた単独公演には元メンバー全員が招待されたようで、現在「ダンス講師」として活動する元℃-uteメンバー村上愛は、このようにツイートしています。

 後に語られた「村上愛脱退」当時のエピソードで最も印象深かったのが、村上愛が脱退することがメンバーに伝えられた日の話です。メンバーがレッスンスタジオに集まっていたところ、会社の人に連れられて村上愛が遅れてやって来る。どうも様子がおかしい。全員集合させられて、そこで村上から直接「℃-uteを脱退」する事が説明されたそうです。そして、この日でお別れになるからと、レッスンスタジオの鏡の前で最後に「わっきゃないZ」を8人で踊ったという話です。わりと軽めのトーンで岡井ちゃんあたりが「あれ何だったたんだろうね」なんて話していたのですが、当時小学生とかなんで無理もない話なんでしょうけど。ただ、当時の村上愛がどんな気持ちで踊っていたのかを想像したりとか、そこから完全に道が別れちゃった事なんかを考えると胸がヒリヒリするんですね。℃-uteつんくに書いてもらった初めてのオリジナル楽曲「わっきゃないZ」を最後に踊ったってのがまた何とも。まるで映画や小説のワンシーンみたいな話です。もちろん映像も何も残ってない、かなりの時間が経過して完全に思い出になってからようやく語られた話なんですよね。

ウダウダと書いてしまいましたが、そろそろ終わりにします。つまり「うたちゃん」がメンバーと最後に「愛おしくってごめんね」を踊ることすら出来なかったのだとしたら、それは本当に悲しいことだなあと思ったわけです。