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使命感的な何かが湧き上がってきたら更新するブログ

森ノ宮の純潔歌劇

なんか面白そうなお芝居をやってるってんで「森ノ宮」まで呼ばれもしないのに行ってきました。

演劇女子部 ミュージカル「LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-」

東京公演では空前の「リリウム」旋風を巻き起こしたと風の便りで聞くにつけ、「ステーシーズ」「我らジャンヌ」で「我らハロヲタ」のハートを鷲掴みにした噂の男前末満健一氏による舞台「リリウム」にはかかる期待も並々ならぬものがありました。

しかしこれ「大阪最終公演」一発勝負で挑むにあたり、「ネタバレ」含め事前情報をどこまで入れておくべきか悩ましい部分もありまして、なんでも設定やらなんやら複雑で一回見ただけじゃ全体を把握できない的な意見もあったりして、こりゃどうもある程度の予習は必要だと。ただ「ネタバレなし」の注釈つきで書かれた「感想BLOG」やら「ツイート」を読んだところで、どうしたって行間から透けて見える部分もあり、あまつさえ「狼のリリウムスレ」なんぞチラ読みしようもんなら物語の核心部分さえ問答無用で目に入る始末。

以下、何となく事前に知り得た「リリウム」情報。

  • 工藤が不老不死で黒幕
  • かなり凄惨な大量殺戮シーンがある
  • 鞘師が最後生き残る
  • 工藤、鞘師が歌手としてあるまじきほど喉を酷使する「絶叫」シーンがある
  • 火の鳥-未来編」「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー
  • 中西かななんの男役は「モテなさそう」
  • 末満舞台「TRUMP」と色々関連性が深い内容らしい
  • 評判を聞きつけた「TRUMP」ファンの「女性客」も多いらしい
  • 前日(土曜公演)に研修生の岸本、田中、井上、船木が見に来たらしい
  • あやちょが工藤にメロメロ

何かもう重要な部分がチラ見えどころかモロ出し状態ながら、珍しいことに今回、FC加入以来最高に「そこそこ見やすそうな席」が送りつけられてきた事も手伝いまして、心なしか足取りも軽やかに目的地「森ノ宮ピロティホール」に到着。今回の目的のひとつである「サントラCD」を早速購入します。何か「生写真やるから選べ」ってことなんで「全員バージョン」を選択しました。この写真エディーカガが睨みをきかせて中々の存在感を放っています。

なんでも噂では「女性客」が大挙して押しかけているらしいのですが、柄にもなく「そこそこ見やすそうな席」過ぎた為か残念ながら前後左右を「おっさん」に囲まれた、見渡すかぎりズラりと居並ぶ「おっさん惑星直列」状態での観劇となります。前の席の方がちょうど「一等星」でいらしたようで照明がハゲ返しの照り返しで若干眩しかったことを除きストレスなく舞台に集中することが出来ました。

セリフや歌の中で説明もありますが「リリウム」の独自ワード「ヴァンプ」「繭期」「クラン」「イニシアチブ」「ダンピール」「トランプ」あたりの意味さえきっちり抑えておけば初見でも問題なく理解できる内容でした。はっきり言って情報詰め込み過ぎて失敗しましたねこれ、まっさらな状態で見たほうがより楽しめたと思う。ただ「2回」「3回」見るとまた新たな発見があるだろう事も想像でき、色々と「深読み」したくなるのもまた仕方なしといったところで、実際あの終わり方だとまだまだ「続き」を期待したくなるというか、このやり場のない気持ちの持って行き場に困ってしまうわけです。そういった意味でもカタルシス皆無ながら「余韻」はものごっつい舞台でした。

内容的に気になった点は、なんか鞘師こと「リリー」が「クラン」を崩壊させるべく「イニシアチブ」を使って全員まとめて「皆殺し」したみたいな印象ですが、あれって別に殺したわけじゃないですよね「絵面的」には「皆殺し」なんでしょうけど。実際はファルスによって「少女の姿」のまま何十年何百年と「永遠の繭期」に閉じ込められていた「本来ならとっくに死んでいるはずのヴァンプたち」をファルスの元から開放した(本来あるべき姿にした)というだけであって、まあ見た目は鞘師が大量殺戮に間違いないんですが。たた当の本人である「リリー」だけが開放されなかったという悲劇。

あとこの辺は物語の「創造主」である末満さんの「さじ加減ひとつ」なんでしょうが、ファルスの「最高傑作」である「スノウ」と「リリー」が800年?もの長きにわたって「ファルスの血」である薬を飲み続けたことにより彼と同化(トランプ化)するいう理論の降って湧いた感と、結果的に「スノウ」は「マリーゴールド」に殺され、「リリー」だけが「トランプ化」して生き残った(死ねなかった)ことの何でだろう感。これは鞘師だけ薬を1日「2錠」のところを間違って「3錠」飲んでたとかいう(おっちょこちょい的な)ことなんでしょうか、どうなんでしょうか。

そんな事を考えたらキリがないのでもうやめます。

登場人物の中で一際目を引いたのは悲しきダンピール「マリーゴールド」でした。メイメイこと田村芽実さんは元々こっちが本業みたいな人で「出来る」人なのは重々承知していたのですが、もう「マリーゴールド」登場のシーンから引きこまれました。「負のオーラ」を全身に纏ったような佇まいで現れる、もうここから良かった。すごいかわいそうな役なんですが「リリー」との出会いを経て「まるで死んでいたも同然」だった彼女は生まれてはじめて「命の意味を得る」そしてこの「永遠に続く幸せな夢」を失いたくない、邪魔するものは許さないと思うようになる。

「リリー」を呼び出して、自らの不幸な生い立ちと彼女に対する重過ぎる思いのたけを一方的に語りかける「独白」シーンがあるんですが、田村が見せたあの徐々に「狂気」を帯びていく様は何かもうたまらんもんがありました。あれですよ「リリーの事だからこんなに言うんだぞ!」状態の鬼気迫る怖さがあった。そら鞘師も「変なヲタに絡まれた!!」みたいな顔して逃げ出すわと。

そして一人残された「マリーゴールド」が「リリー」という「たったひとりの大切な友達」を得た喜びを切々と歌い上げるソロ楽曲「もう泣かないと決めた」の歌唱シーンが始まるのですが、これが凄かった。歌の緩急の付け方、感情の乗せ方が一級品。曲のクライマックスものすごい声量による熱唱「得~たあのーーー」から一転して少しタメを作り、そっと噛みしめるように静かに歌う「私は一人じゃない」の見事さ。これは痺れましたね。

田村芽実さんに対してこれまでは良くも悪くも「こんなのただの人気投票じゃないか!」*1というハロプロ内格差に切り込んだ歴史的名言以外これといった印象がなかったといえば少し言い過ぎですが、正直「芸が濃すぎ」て敬遠してきた所がありました。何というか「孤高の天才」なんて称され方もしますが、「芸は一流、人気は二流、ギャラは三流。恵まれない天才、私が上岡龍太郎です。」的な才気に満ちたゆえの「取っ付きにくさ」があったんですね。しかし「リリウム」を観て俄然興味が出ました。

 今回「最終公演」という事で通常のカーテンコールの後に「リリー」鞘師と「スノウ」あやちょの2人だけが登場し「さよならのかわりに」鞘師が手に持ったユリの花をそっと舞台上に置いて立ち去るという山口百恵リスペクトな美しい演出があり、これをもって「リリウム」全公演終了。観客、演者ともに「永遠の繭期」から開放されて「現実世界」に強制帰還となりました。

初見の関西人からすれば「いきなり最終回」だもんで、また見たいと思ったところで「池袋」に行っても「森ノ宮」に行っても「クレマチス」の絶叫を聞くことは二度とありません、聞こえたら聞こえたでそれはもう怪奇現象です。真夜中、誰もいないピロティホール前を通りかかると何処からともなく悲しげな少女の声が聞こえてくる私を忘れないで…これはちょっとありそうです、小田ベチカならやってくれそうです。しかし小田さくら演じるシルベチカが謎の失踪と聞いて、真っ先にこの画像を思い出した事はここだけの内緒です。

https://i.imgur.com/0H9nDgQ.jpg

舞台はナマモノで二度と同じものが見られないからこそ素晴らしいとはいえ、末満氏の「歌劇」には和田俊輔氏による数多の魅力あふれる楽曲群が同時に生み出されるわけで、「ステーシーズ」ではタワレココンピアルバムによって「キマグレ絶望アリガトウ」が奇跡の復活を遂げたものの「再殺部隊」*2や「リルカは地獄」といったその他の名曲はCD音源として残されませんでした。

続く「我らジャンヌ」でもサントラCD待望の声は多く聞かれましたが結局実現には至りませんでした。

そして今回の「リリウム」では遂に「サントラCD」販売が実現しました。「レコーディング前日に曲を渡され、必死に覚えて、1日で録り終えた」というブラックサバスの1stアルバムを彷彿とさせるエピソードには度肝抜かれましたが、過密スケジュールの間隙を突く「突貫工事」による作品ながら、こうしてきっちりと「劇中歌」が作品として残された事は本当にありがたいです、もちろん舞台を重ねることで歌唱自体はレコーディング時と比べて段違いの進化を遂げた事でしょうけども、やはりCDを聞くだけで鮮やかにそのシーンが蘇る。まあ当方「1回」しか見てないもんで何となく「薄ぼんやり」としか蘇りませんが、それでも「リリウム」という舞台上に流れていた「空気」みたいなもんは感じられるわけです。

取りとめもなく長々と書いてきましたが、そろそろまとめに入ります。

「工藤は髪を伸ばしたほうが可愛い」という圧倒的世論の声(道重リーダー含む)を拒み、頑なに髪を切り続けることで貫いてきた「ボーイッシュキャラ」が、ようやくこうして「ファルス」という最高の形で成就した「工藤遥」さん。これはもうハロプロが誇る若き「男装の麗人」として暫くこのまま突っ走ってもらいましょう。

てことで次回「演劇女子部」はモーニング娘。工藤遥主演作「末満版~リボンの騎士~」を期待しつつこの駄文を閉めたいと思います。

*1:モーニング娘。9期10期とスマイレージ2期メンバーの合同で行われたFCイベント「ガチ☆キラ」での一コマ。ゲームコーナで観客の拍手によって勝敗を決めるという「モーニング娘。」サイドに明らかに有利な条件に異を唱えて田村が放った名言

*2:原曲は筋肉少女帯